Synchron Stage Viennaは、優れたサウンドライブラリおよびバーチャルインストルメントのデベロッパーである、Vienna Symphonic Library (VSL) により設立された、新たなワールドクラスの映画音楽の制作ステージです。

従来の大規模なレコーディング・ミキシングや映画音楽制作、モダンなプロダクション、またワークフローアプローチやVSL自身の使用も目的とした、オリジナルのオーケストラプロダクション施設として建設されました。このウィーンでのプロジェクトでは、1940年代の映画音楽ステージやプロダクション施設が完全に改修されました。スタジオには、大規模なコントロールルームを備えたステージA (540m2)、第2ライブルームBおよびコンロールルーム、プロダクションやクライアントが活用できる20のスペース、Vienna Symphonic Libraryのオフィスと編集室があります。 

この施設の技術面における目的は究極の柔軟性にあります。オーディオの品質を損なうことなく、クライアントそれぞれの構成ニーズに適合しながらもVSLオフィスを含むすべての部屋を接続できる柔軟性が求められ、 施設内のどこにいても、すべてのオーディオチャンネルを利用できること、そして192kHzへの対応と同時に、必要に応じて低サンプリング周波数への対応も求められていました。プロジェクトのコンサルト、TSAMM Professional Audio SolutionsはソリューションとしてDanteネットワークを提案しました。Danteのルーティング、プラグ&プレイの検出、多チャンネル、シンプルで効率的なPTPクロックは、あらゆるワークフローに対応し、とても魅力的なソリューションでした。

各コントロールルーム (A,B,それぞれ96ch、48ch) にはSSL Duality Deltaが選ばれ、Dualityのクリーンで高い音質を誇るアナログ回路および、VHD (Variable Harmonic Drive) 回路によるトーン・フレキシビリティのコンビネーションは、チームが重要視する部屋間の一貫性や  従来の映画音楽制作に携わるクライアントにとって重要とされるトーン・フレキシビリティを実現してくれました。また、セントラルオーケストラ・ライブルームのモニターミキサーには、スナップショット機能に加え多数の入出力、妥協のない安定した高音質を提供するSSL L500デジタルライブコンソールが採用され、

さらに33台のSSL Network I/O MADI-Bridgeユニットと18台のAlpha-Link MXオーディオコンバーターがシステムに配備されました。DualityコンソールのすべてのA/D・D/A変換にはSSL Alpha-Link I/Oユニットが使用され、各Alpha-Linkペア (Dualityのチャンネル出力とモニター入力、バス出力およびリターン) は、SSL MADI-Bridgeに接続されリダンダント接続を構成し、(必要に応じて) Dante I/Pネットワークのサンプルレートの変換を行います。

SSL LiveコンソールはオプションであるDanteインターフェイスが用意されていますが、このプロジェクトにおいてはSSL Liveの最大サンプリング周波数である96kHzから、Danteネットワークへの192kHzへのSRCが必要とされたため、MADI-BridgeはデジタルトランスポートおよびMADIを経由したL500コンソールのサンプリング周波数の変換をサポートします。

MADI-Bridgeと9つのSSL Delta-Link MADI HD Pro Tools®インターフェイスは様々なサンプリング周波数で動作し、Danteネットワークとの送受信が可能な、5つのPro Toolsワークステーションにも使用されます。Dante Virtual Soundcardやその他のDante対応I/Oデバイスを搭載したコンピュータは、プロダクションスイートやVienna Symphonic Libraryオフィスで使用され、また主要なルーティングとラベリングは、AudinateによるDante Controllerソフトウェアをより行うことができ、これは、ネットワーク上のどこでも複数のコンピュータで同時に実行することができます。 

シングルセントラルスイッチ構成を採用し、ネットワークホップを最小化することで、極小のDanteレイテンシーを実現しました。また2台の48ポートCisco SG500-48ネットワークスイッチの使用により、フルリダンダントネットワークを構成しています。

完成したスタジオの基本的な物理I/Oはおよそ1000チャンネルで、ネットワークは十分なヘッドルームを備え、必要に応じてDante対応デバイスを追加することも可能です。

192kHzでは、52ポートのギガビットスイッチの各ポートは128チャンネルの入出力をサポートし、0.25msの固定レイテンシーを実現し、またシステム内で使用されるSSL MADI-BridgeとDante Virtual Soundcardデバイスは、192kHZで16チャンネルの入出力をサポートします。96kHZまたは48kHZでの動作時は、ポートおよびシステムのキャパシティはさらに向上します。

テストではシステムの末端との往復パスをテストし、メインステージのマイクからA/D (Alpha-Link)、MADI-Dante Bridgeでネットワークに接続し、もう1台のMADI-Bridgeを経由してL500コンソールから出力されたミュージシャンのヘッドフォンへのアナログモニタリングのリターンは、わずか0.7ms未満でした。テクニカルディレクター兼チーフオーディオエンジニアのBernd Mazagg氏はSSL Network I/O MADI Bridgeのパフォーマンスを高く評価し、こう述べています。「私が知る中で最も高速なネットワークデバイスの一つです」

施設での初回レコーディングテストはフルオーケストラで行われ、指揮者・管弦楽作曲家のConrad Pope氏、映画音楽ミキサーのDennis Sands氏など、多くの映画音楽関係者が参加しました。Dualityのプリアンプは多くのインプットを良好に増幅し、コンソールのVHD回路は、いくつかの入力に適度なカラーを加えるために使用されました。テクニカルディレクター兼チーフオーディオエンジニアのBernd Mazagg氏はこう述べています。「初めて音を聴いたときは実に感動しました。緊張していましたから。音に自信はあったのですが、実際にオーケストラの演奏をスピーカーや信号のパス全体を通して初めて耳にしたときはただただ驚くばかりで、予想よりもはるかに素晴らしいものでした」